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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成15年6月 第3週

治療法 人工材料で機能回復

虫歯治療の基本は、むし歯によってできた悪い部分を取り除いて、それ以上進まないようにし、その部分を人工材料を使ってリフォームすることで、失われた機能を回復させることです。

歯の表面のエナメル質が歯垢中の酸で溶かされることからむし歯は始まります。ごく初期のものはエナメル質の成分は溶け出すものの、きちんと歯ブラシをしてフッ素塗布などを行なうことで、自然治癒も期待できます。ところがそのまま進んでしまうと、むし歯によって柔らかくなった部分をきれいに取り除いて、その部分を人工材料で詰める必要があります。

もう少し深いところまでむし歯が達すると、冷たいものがしみたり、痛みが出てくるなど、何らかの自覚症状が出てきます。この状態では、すでに歯髄(歯の中の神経)まで細菌に侵されている場合が多いので、人工材料を詰める前に歯髄を保護する処置をする場合もあります。

それでも痛みなどが続く場合や、明らかに歯髄までむし歯が進んでいる場合は、歯髄を取り除きます。取り除いた後の空間(根管)は、無害で安定した材料(根管充填剤)を詰めて、最後に失われた部分を修復します。

さらに歯髄全体が腐敗したり、治療を中断して放置した歯などは、歯の根(歯根)の先に膿の袋を作って、そこが痛みを伴って腫れてきます。こうなると歯肉を切開したり、根管を通じて膿を出してやる必要があります。膿が出なくなった後は、消毒薬などを使ってきれいにして、先ほどと同じように根管充填剤を詰めて修復します。

そのまま歯の崩壊がひどくなると、修復しても機能させることは難しくなり、残念ながらその歯を抜かなければならなくなってしまうのです。

歯の修復に使う人工材料には、ペースト状になった材料を歯がなくなった部分に詰めてから固める(固まる)ものと、型を取って歯に詰める部分を作って、歯科用の接着剤でつけるものがあります。

ペースト状材料の代表的なものに、コンポジットレジンがあり、この材料は簡単にいうと、プラスチックにガラスの微粒子を配合して適度の強度を持たせて、天然の歯の色に極めてよく似せたものです。以前は前歯や小さな修復に用いられましたが、最近では材料の進歩や、患者さんからの審美的な要求、歯を削る量を少なくする治療法の普及によって、応用範囲も広がってきています。ただ長期的には磨耗や変色などが他の材料より起きやすい面もあります。

型を取る方法では、金属を使った方法が現在最も普及しています。金属は精密に加工することができて、薄い部分も強度が維持できるため、大変良い材料ですが、一方で金属アレルギーの問題や、審美的な問題がでてきます。金属以外の材料ではセラミックやプラスチックなどや、強度と審美的要求を両立するために金属にセラミックやプラスチックを貼り付けたものなどが使われます。これらの材料はその人それぞれの歯の色に似せて作ることが出来るので、自然な口元を再現することができるのです。

ここでお話したのは治療法のほんの一部です。

それぞれのケースによって、材料や治療法が異なり、保険給付外のものもありますので自分にとってどんな治療法がいいのか、かかりつけの歯医者さんと良く相談するといいでしょう。

平成15年6月16日(月)
愛媛新聞生活欄18面掲載