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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成14年11月 第3週

顎関節症 原因多様 悪い姿勢も

最近、「顎関節症」という言葉を耳にすることはありませんか?この顎関節症とは、「頭部や顔面の痛みを伴う、下顎の機能障害」と定義づけられています。わかりやすく言いますと、耳の穴の前あたりにある、顎の関節に異常があるために、口が開きにくい、開け閉めする時に顎が痛んだり関節に異音がするといった症状が出るのです。

顎関節症の原因を特定するのは今のところ難しく、食いしばり・歯ぎしり(ブラキシズム)、悪い姿勢、睡眠障害、ストレス、感情的な問題(不安、抑うつ)、不適切なダイエット、そして医科的・歯科的疾患などのいろいろな因子が絡み合って発症すると考えられています。それらの因子は、発症の元になったり、引き金になったり、また発症後それを持続させたり進行させたりする因子にもなる訳です。

長時間の同じ姿勢での作業や頬杖をついたり、高すぎる枕を使用することで、顎に負担がかかります。テレビゲームを毎日長時間やりすぎたことが顎関節症の引き金になったケースがありました。これは子供たちの場合に特に言えることなのですが、家の中でじっと同じ姿勢で、話すこともしないでゲームに熱中しているため、当然、筋肉の緊張、精神的な疲れ、血液循環の滞りなどの状態が続き、顎の関節だけではなく全身的にも影響があります。

食いしばる力は、起きているときは、男性で普通60kg~70kgくらいですが、潜在的な筋力は通常の約3倍程度あって、就寝時には200kgを超えることもあると報告されています。寝ている時にはこれ以上噛むと周りの組織が壊れてしまうから、もう止めてくれという制御システムが働いていないためです。

このような強い力で噛まれると顎関節や周りの筋肉に限界を超えた負荷がかかり、顎関節症を発症するといわれています。このブラキシズムもストレス、疲労、飲酒などの因子によってより強くなります。

また、治療途中の歯、むし歯や歯周病にかかった歯を長い間放っておいたり、歯が抜けたままにしていると、噛みあわせが悪くなって、それが契機となって発症することもあります。その場合は噛みあわせを適正にすることにより、顎関節症が改善することもあります。

このように顎関節症は様々な原因が絡み合って発症しているため、その治療、管理においても多面的な対応が必要になってきます。歯科的対応、理学療法的対応そして心理療法的対応の3つが並行して行われることもあります。顎関節症の症状かな?と思ったら、そのままにしておかずに歯科医に相談しましょう。

平成14年11月18日(月)
愛媛新聞生活欄16面掲載