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いろ歯にほへと

愛媛新聞に掲載記事のバックナンバー

平成14年5月 第3週

タバコと口の健康 歯周病の進行が加速

皆さんご存知でしょうか?5月31日は世界禁煙デーです。この日はWHO(世界保健機構)が定めた、タバコを吸わないことが一般的な社会習慣になるよう呼びかけ、適切な対策の実施を求める日です。今年の標語は、「Tobacco Free Sports-play it clean:スポーツにタバコは無用、空気もプレーもクリーンに」です。WHOとその共同組織はスポーツからあらゆる形のタバコすなわちタバコ消費、受動喫煙曝露、タバコの宣伝と販売促進活動をなくすためのキャンペーンを始めています。

米国の疾病予防センター(CDC)、国際オリンピック委員会(IOC)、国際フットボール連盟(FIFA)、国際自動車連盟(FIA)、オリンピックエイドおよび各地のスポーツ組織は、WHOとともに、この「Tobacco Free sports」キャンペーンに参加することになっています。

タバコのないスポーツイベントは、日本と韓国で行われる2002年ワールドカップサッカー大会を始めとして、世界中で開催されます。

その一方で、タバコの害とガン・心臓病など全身との関連は、たくさんの情報が、氾濫しているにもかかわらず、日本では3,363万人もの人がタバコを吸っています。しかも、未成年者や若い女性の喫煙者は増加の一途をたどっており、先進国でも日本の喫煙率はきわめて高いものとなっています。

タバコは、喫煙者だけでなく周りの人にも害を及ぼします。タバコを吸っている人の近くでその煙を吸い込むことを受動喫煙といいます。タバコの煙はフィルターを通した煙(主流煙)より、火のついている部分からの煙(副流煙)の方が有害物質を多く含んでいます。妊婦の方は、本人の喫煙はもちろん受動喫煙によっても流産・早産・死産・低体重児の可能性が高くなり、子供・乳幼児にはぜんそく・乳幼児突然死症候群を引き起こすため特に注意が必要です。

このような有害な煙が最初に通過するお口にも、さまざまな害をもたらします。歯肉・舌などの口腔・咽頭ガンの発生率は3倍になります。また、歯を失う大きな原因の一つである歯周病には5倍かかりやすくなります。今回は、タバコと歯周病についてお話します。

歯周病とは、歯周組織(歯を支えている歯ぐきや骨などの組織)に起こる炎症を主な症状とする病気です。歯と歯ぐきの間にバイオフィルムと呼ばれる歯周病原因菌とその副産物の塊が付着し、歯周組織を破壊し、歯ぐきが腫れて出血したり、膿がでてさらに進行すると歯がグラグラになり、やがて抜けてしまいます。この歯周病の進行を、速める要因が危険因子と呼ばれ、タバコも重要な危険因子です。では、喫煙がどのように歯周病に影響するのでしょうか。まず、歯にヤニ(タール)などが付着し、歯にバイオフィルムが付着しやすくなります。ニコチンの作用で、血管が収縮し血液の流れが悪くなりまた、一酸化炭素による酸素不足・ビタミンc不足も加わって傷口の治癒が悪くなります。細菌に抵抗する免疫力が低下し、歯肉が繊維化するなどの原因で喫煙者は、歯周病の進行が速く、治療の効果も悪くなります。この様な原因でインプラントや口腔外科などの治療にも悪影響します。

そのほかにも、味覚や嗅覚が鈍くなったり、歯肉はメラニン色素の沈着がすすみ黒くなり、年齢より顔のしわが増え、皮膚の色も浅黒くなりほほの辺りの肉がこけて見えるスモーカーズフェイスと呼ばれる顔つきになり、顔貌にもよくない変化が出てきます。

全身の健康と、お口の健康のためにも、世界禁煙デーを機会に禁煙を!

平成14年5月20日(月)
愛媛新聞生活欄16面掲載