羽賀さん一家の

元気ではぴか

第3回 羽賀さんのゆううつ
(歯周病編)

冗談じゃない

文:飯尾秀人、絵:KOUJI
上手な歯磨きは練習から

<これまでのあらすじ>
羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。ある朝、顔が腫れて、歯医者さんに行った大二郎さんは、歯周病と診断され、定期検診の大切さを学びました。

三日経って大二郎さんが次に歯科医院を訪れた時、先生は大二郎さんの顔を見ながら言いました。

 「顔の腫れが引いてよかったですね。でもこれからは少しでも無理をすると、この前みたいになるかもしれませんよ」

 「えっ、またですか」

驚いたように大二郎さんが叫ぶと、先生はさっき調べた歯周検査の紙と大二郎さんのレントゲンを見ながら、歯周病についての説明をはじめました。

「歯周病は、歯の周りの歯茎や骨の病気なのです。最初は歯茎がはれて出血したり水がしみたりしやすくなりますが、そのまま放っておくとうみがたまってきます。そしてさらに進行すると骨が溶け歯がグラグラになり、やがて抜けてしまうのです」

「じゃあ、この前はれていたのは、うみがたまっていたのですか」

「そうですね。今はこの前飲んでもらったお薬で、うみがたまるのを抑えていますが、そのうちにまたはれたり、最終的には歯を抜くことになりますよ」

「歯抜けの顔……」

そうつぶやいた大二郎さんの脳裏には、ニッコリ笑っている内蔵さんの顔が浮かんできました。お世辞にもダンディーとはいえないあの前歯の抜けた顔が……。

「そんな、冗談じゃない。先生、どうにかならないのですか」

「歯周病の予防も治療も、ハミガキに始まり、ハミガキに終わるといわれています。というのも、大切なのはその原因となる歯の表面にべっとりついたプラーク(歯垢)を除去することなのです。ですからしっかりハミガキをすれば、進行をストップさせることも可能ですよ」

「えっ、でも私はハミガキを朝晩欠かしたことはないんですけど」

事実、大二郎さんは昼食の後にも会社でハミガキを欠かしたことはなかったのですから。

「ハミガキをしているのと、ハミガキができているのは、まったく別のことなのですよ。次回担当の衛生士がハミガキ指導をする時に磨き残しのプラークを赤く染めてみますから、ご覧になってみてください。ところで羽賀(はが)さんは何かスポーツをされていますか」

「月に一回ぐらいは、ゴルフをしていますけど」

「ゴルフも、いいクラブを買っただけでは、うまくならないでしょう。うまく出来ない所を誰かに教えてもらったり、ご自分で何度も練習したりしませんか?」

「そうですね」

大二郎さんは、ばつが悪そうにそう答えました。

「ハミガキもそれといっしょですから、頑張って指導を受けてみてください」

その後も先生の説明は続きましたが、歯周病は生活習慣病といわれていて大二郎さんが大好きなタバコも残念ながら要因の一つとのことでした。それでも、禁煙なんて冗談じゃないと羽賀さんは思っているのでしょうか。=愛媛県歯科医師会監修、毎週木曜掲載


<はぴか情報>
歯磨きは、ほとんどの人が1日2回以上しているのですが、磨き残しが多いのが現実です。ものを食べたらすぐに、歯磨きしましょう。歯ブラシは古くなると機能が弱まり、同じ時間磨いても歯垢をしっかり落とせません。歯ブラシの交換時期は磨き方や回数によりさまざまですが、少なくとも1カ月を目安に新しいものと交換したいものです。(資料提供 8020推進財団)