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脳障害発生の機序
脳震盪とは、受傷後、一過性の意識消失をきたしますが、2時間以内に意識が戻り、その後、神経系の障害がみられないものをいいます。一過性とはいえ意識消失があったのですから、脳になんらかの変化があったことは間違いないところです。

スポーツ外傷の際の、外力は多くの場合、顔面下部など、頭部前面に発生します。外力が弱いと衝撃を受けた部位のみ損傷されますが、強いときには脳に影響を及ぼします。
また、脳への影響は、外力が比較的軽いと脳震盪程度で済みますが、強くなると、脳挫傷、頭蓋内出血をきたし、重篤な結果を引き起こします。

この脳に対する外力の影響は、外力が加わった場合の頭蓋骨と脳の移動にズレが生じるために起こります。頭蓋骨と脳の間には、髄液で満たされた空間があります。いわば、脳は頭蓋骨の中で水に浮いた状態であると考えてください。顔面に衝撃をうけると、頭蓋骨が直線的に移動または回転します。しかし、脳は同時には動かず、元の位置に留まろうとします。このため、衝撃を受けた側の脳は移動する頭蓋骨内面とぶつかることになります。衝撃を受けた反対側では、空間が広がることとなり、この広がりが大きくなるとこの部分の脳表静脈が伸展断裂し出血をきたします。この機序により、脳障害が起こります。

なお、スポーツ外傷の場合は、脳の直線的加速よりも回転的加速による影響が大きいといわれています。
マウスガードによる脳外傷の予防効果
マウスガードを装着することにより、脳の外傷を予防できるといわれています。Hickeyら(1967)らが遺体を用いて頭部に衝撃を加えて脳圧の変化を測定した実験によると、マウスガードを装着したほうが脳圧の上昇も少なく、持続時間は短くなったとされています。
実際、ボクシングの試合でマウスガード装着が義務化されてからは、試合中の脳震盪の発生が激減しています。
マウスガードを装着するとなぜ脳外傷が少なくなるかは、いまだ科学的に解明されてはいませんが、仮説として以下のものがあります。
@マウスガードが衝撃を吸収し、外力そのものを減じる。
マウスガードがクッションの役目を果たしているということで、脳外傷の予防機序として、大いに考えられます。
A衝撃時に噛みしめやすくなり、噛みしめることによって頸部が固定され、頭部の移動を抑える。
前述したように、衝撃を受けても頭部の移動量が少なければ、脳に対する影響も少ないといえます。噛みしめると関節が固定されそれが体全体の固定につながるといわれています。衝撃時に噛みしめが起こっておれば、頸部が固定され、頭部の移動が少なくなり、脳への影響も少なくなることは考えられますが、これらに関する実験データはなく推測の域をでません。
マウスガード装着・非装着での頭蓋内圧の差 
Hickeyら(1967)
参考文献
1) Jodson C, Hickey et al : The relation of mouth protctors to cranial pressure and deformation.
JADA.74 : 735-740, 1967.
2) 前田芳信 : スポーツは良い歯から. 大阪大学出版会. 2005.
3) 前田芳信, 安井利一, 米畑有理 : マウスガード製作マニュアル, クインテッセンス出版, 2003.

出血 contra-coup injury
挫滅 coup injury
外力
前方部で脳は頭蓋骨内面と衝突する。後方では脳静脈が伸展・断裂し出血をきたす。
前方部に衝撃を受けると頭蓋骨は後方に移動するが脳は元の位置にとどまろうとする。
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