◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
◇お口の育成編 最終章 明日への願い/1 口唇力を鍛えろ!
◇リップトレーナーの威力
◆これまでのあらすじ
 羽賀さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。ある日、加奈さんの夫で雑誌社に勤める板井洋(いたいひろし)さんと同僚堀井(ほりい)さんは、それぞれの家族と明夫君を連れてブドウ狩りに行きました。
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 「おねえちゃん、ブドウがたくさんなっているよ」
 車窓から広がる風景が、先ほどまでの桑畑からブドウ畑に変わった時、明夫君が目を輝かせながら加奈さんに声をかけました。暑い日差しも緩んできた9月の日曜日、明夫君と板井さん一家は、休日を利用して堀井さんの家族とブドウ狩りにやって来たのです。みんなで行ったブドウ農園は、シーズンの終わりを迎えていましたが、まだお腹を満たすには充分な数のブドウが、たわわに実っていました。そのお陰で、到着して一時間余り、ブドウ狩りとその味をひとしきり堪能することができたのです。
 「ブドウだけで、お腹がいっぱいになったよ。明夫君はどうだい?」
 「うん、でも僕、まだ食べられるよ」
 洋さんの言葉に、明夫君がブドウは別腹だと言わんばかりに返事しました。
 「何でもおいしく食べられるということは、ありがたいことだね。それに自然の空気が、こんなにすがすがしいなんて、普段考えたこともなかったよ」
 「あなたの場合は、美代が生まれてから禁煙しているから、ここの空気のおいしさはひとしおでしょうね」
 加奈さんの言ったように、美代ちゃんにメロメロの洋さんは受動喫煙の影響を考えて、現在禁煙に挑戦中でした。そうして三人がくつろいでいると、堀井さん一家が、また籠に山ほどのブドウを摘んで帰って来ました。どうやら堀井さん一家も、ブドウは別腹だったようですが、洋さんは堀井さんの長男、聡(さとる)くんの顔を見て、あることに気がつきました。
 「最近、堀井とこのお兄ちゃんは顔がしまって、大人っぽくなった気がするな」
 「気がついたかい。実は、秘密があるんだよ。聡、今日もあれを持っていただろ」
 お父さんにそう言われた聡くんは、ポケットからケースに入ったプラスチックの小さな器具を取り出し、みんなに見せてあげました。それはリップトレーナーという口唇の力を鍛えるための器具した。実は、堀井さんのいびきはスリープスプリントを早留先生に作ってもらい、症状を改善することができたのですが、同じいびきで悩んでいた長男の聡くんは、成長期のため同じものを使用することができませんでした。それで、その代わりに早留先生が、その器具(きぐ)を毎日使うことを薦めてくれたのです。
 「そういえば、同じものが写っているポスターが、日真名先生の診療所にも貼ってあったわ」
 加奈さんは、そのポスターの中で、唇の筋肉を鍛えて、口呼吸から鼻呼吸に改善しようという部分が気になっていました。というのも明夫君の前歯が少し飛び出しているのは口で息をするのが原因だと、浮江さんが悩んでいたからです。
 「あんなもので治るのかと半信半疑だったけど、いびきの改善にも役立つのね」
 「頬や顎を引き締める効果があるから、小顔ケアのアイテムとして最近ではエステでも使用されているらしいわよ。今度、詳しく教えてあげるわね」
 明子さんが、加奈さんにこっそり耳打ちしました。
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 ◇はぴか情報
 おかあさん はみがきするけん あめちょうだい(5歳、大西陽介君)
 愛媛県歯科医師会(089・933・4371)の第1回「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学生以下、中高生、一般)ユニーク賞受賞作をご紹介します(学年・年齢は昨年)。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページに。