◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
◇トピックス編 第13章 堀井さんの悪夢/4 マスコミとの共存
◇医療情報は正確さが大事
◆これまでのあらすじ
 羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。ある日、加奈さんの夫で雑誌社に勤める板井(いたい)さんの同僚堀井(ほりい)さんは、歯科医師の早留先生(はやるせんせい)と、虫歯と地域社会のつながりについて話をしました。
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 堀井さんは早留先生との会話から、児童虐待の問題は児童相談所や市町村だけでなく、病院や学校など、子供に関わる関係機関や地域社会全体で取り組まなければならないと、痛感しました。またそれがうまく機能するには、各組織が連携して虐待防止ネットワークを組み立て、情報交換が効率よく行われる必要があるのです。
 まだ時間が空いていた二人は、取材が終了しても話を続けていました。
 「そういえば先日テレビを見ていたら、塗るだけでムシ歯を治す薬の話が出ていましたが、真偽の程はいかがなんでしょうか?」
 「確かにいい薬で、僕もよく使っているんだけど、例えば、家の壁にひびが入ったとするよね。もし、そこを塗り直して補修すれば見た目ではわからなくなるけど、実際はどうだと思う?」
 「ひびが入るというのは家全体が歪んできているわけですから、根本的に直ったわけじゃあないですよね」
 「そのうちに、またひび割れてくる可能性もあるということだよね」
 「じゃあ、歯を削らなくても治療ができるというのは、まやかしなんですか?」
 「いや、そうじゃないよ。適応症を選ばなければならないということだよ。万能薬など存在しないし、もしあれば薬を飲めば医者なんかいらなくなるよ。でも僕は報道する側にも問題があると思うんだ。レーザーやインプラントが出た時もそうだったけど、今までの手法は間違っていて、あたかも古い方法のように報道しているからね。でも実際は、新しく選択できる手段が一つ増えただけで、今までの方法を否定している訳ではないんだよ」
 どの分野においても新製品が出た場合、画期的な商品という触れ込みの方が消費者の目を引くでしょう。しかし、そこには長所だけでなく短所もあるので、特に医療現場においては適応症を考慮しながら、ひとりひとりの患者さんごとに、幾つかの方法を選択していく必要があるのです。
 「視聴者や読者が喜びそうな話題を提供したいという気持ちが、誇大広告になる危険性もあるということですね」
 堀井さんは、以前参加したメディア懇談会において、挨拶をした先生が『これからは、両者が綿密に情報交換をしていきましょう』という話をしていた時、『馴れ合いになるのは御免だよ』と、心の中で少し反発していました。しかし、今の話を聞いていると、コミュニケーション不足から、偏った報道を行う可能性だってあるのです。今後、IT社会の広がりとともに、報道はますます迅速性を要求されますが、その事象に対する正確性もさらに問われる時代になっていくでしょう。そのためには、ある事実に対して、いろいろな角度から検証を行い、最後の選択は視聴者に委ねられなければならないということを、肝に銘じなければならないのです。
 「これからは先生に教えていただいたことが事実かどうか、よく検証していかなければならないですね」
 「おいおい、揚げ足をとるのはいっしょに飲みに行った時だけにしてくれよ」
 実はふたりは懇談会で出会って以来、親交を深めていて、仲の良い飲み友達だったのです。
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 ◇はぴか情報
万緑へ ありがとうと 乳歯投げ(一般、大野泰司さん)
愛媛県歯科医師会(089・933・4371)「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学生以下、中高生、一般)第1回入賞作(学年は昨年)をご紹介します。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページにあります。