◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
 ◇トピックス編 第13章 堀井さんの悪夢/3 地域力を見直そう
 ◇口の中は家庭生活を映す
 ◆これまでのあらすじ
 羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。いっぽう、加奈さんの夫で雑誌社に勤める板井(いたい)さんの同僚・堀井(ほりい)さんは取材を通じ、虫歯が児童虐待問題にも関係があると聞いて驚きました。
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 堀井さんは早留先生(はやるせんせい)からもらった資料の中で、児童のムシ歯と児童虐待の関係(かんけい)の部分に注目しました。そこには、虐待を受けている児童は、受けていない児童の2倍以上のムシ歯ばを所有しているという事実があったのです。
 「やはりムシ歯の多い子供は、家で虐待を受けている可能性があると考えていいのでしょうか?」
 「ムシ歯が多いということは、それ以外の家庭生活も不規則なことが多いからね。親は子供が健全な成長・発育ができることへの責任を負う義務があるということを考えれば、「養育の放棄・怠慢」も一種の児童虐待と考えてもいいかもしれないね」
 近年、保健意識の向上と共に、口腔内状況への関心も高まり、幼児、児童の口の中は、ムシ歯罹患率(りかんりつ)の低下、治療率の向上など大きく改善されてきています。しかしその一方で、乳幼児歯科健診や学校歯科健診を行うと、一部の子供達は多くのムシ歯を治療しないまま放置されているという二極化が進行しているのです。
 「でもどうやったら、そんな子供達を救うことができるのでしょうか? 最近は誘拐犯に間違われるから、うっかり子供に声も掛けられない時代ですからね」
 「病気といっしょで予防が大事なんじゃないかな。先日、僕たち歯科医と警察との間で会合があったんだけど、その席でも犯罪が起こりにくいような社会のシステムを作っていくことが大事だといっていたからね」
 「何故、警察と会合をしているんですか?」
 「飛行機事故による遺体の身元特定をきっかけに、歯科医と警察との情報交換は必要不可欠なものとなったんだよ。癒着でなく連携のための会合だから、間違っても駐車違反やスピード違反を、大目に見てくれるわけじゃあないんだよ」
 大規模災害や犯罪の多様化に伴い、国民が安心して暮らせる安全な社会を作るには、各種団体が連携してネットワークを構築する必要があります。そのため歯科医師会の中にも警察との情報交換を行う組織を編成しているのです。
 「その会合の中の講演で、昔の日本にあった地域力を見直そうという話があったけど、これは犯罪だけでなく、虐待や社会生活全般にもいえることじゃないのかな」
 「地域力ですか?」
 地域力とは隣同士が助け合うという連帯感や結束力に支えられた地域社会のことであり、そこには犯罪を防止して治安を維持する力があるのです。また警察の捜査にも地域社会の情報は不可欠であり、地域にあるすべての関係団体が協働することにより、地域力は向上するのです。
 「現代社会は核家族化が進んで、地域との結びつきも弱まってきているからね。僕たちがこうやって情報交換をしているのも、地域力を高める一つの方法かも知れないね」
 「そういえば先生と知り合ったのは、歯科医師会主催のメディア懇談会でしたね。これからは犯罪を未然に防ぐには、『隣は何をする人ぞ』では、いけないのでしょうね」
 今日の日本社会はプライバシーが優先されて、個人の自由と好き勝手が履き違えられているのかもしれません。地域の力を取り戻すためには、組織的な仕組みを作り、それを継続していくことが重要なのです。
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 ◇はぴか情報
歯並びの きょう正はなし 金魚買う(小5、二宮由梨香さん)
うまいこと 乗せられ抜歯 夏休み(中2、二宮綾香さん)
 愛媛県歯科医師会(089・933・4371)「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学生以下、中高生、一般)第1回入賞作(学年は昨年)をご紹介します。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページにあります。