◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
 ◇トピックス編 第13章 堀井さんの悪夢/2 ムシ歯が多いと子供があぶない
 ◇児童虐待との関係は?
 ◆これまでのあらすじ
 羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。いっぽう、加奈さんの夫で雑誌社に勤める板井(いたい)さんの同僚・堀井(ほりい)さんは取材を通じ、虫歯が児童虐待にも関係があると聞いて驚きました。
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 堀井さんは以前、取材をした時、睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)になると、無呼吸による酸素不足が生じて、その結果、脳卒中や心臓病・高血圧などを引き起こすことを知りました。またその病気の患者は必ずいびきをするので、いびきは身体の発する危険信号だということも教えてもらったのです。しかしアルコールの常用も、いびきの原因になると知った明子さんは、少し顔をこわばらせています。
 「そういえば、飲んで帰った日はあなた、ガーガーいびきをかいているわ。それに朝、部屋中がアルコール臭くって、こんな所でいっしょに寝ていたのかと思うと、寝室を別にしたくなるわ」
 「別の部屋といっても、どこで寝るつもりなんだい?」
 「私は、今の部屋を使うに決まっているでしょ」
 「じゃあ、俺はどこで寝たらいいんだい?」
「余っている所は、あそこしかないでしょ」
 そう言った明子さんの手は、ベランダを指差していました。堀井さんにとって、いびきは夫婦関係の危険信号でもあるようです。先ほどまでは雄弁にしゃべっていた堀井さんでしたが、その後は静かな朝食をとらざるを得なかったようです。
 「そろそろ出かけないと、会社に遅れるんじゃない」
 しばしの沈黙の後、先ほどと違って、明子さんの声が、あまりかん高くなくなったようなので、堀井さんは胸をなでおろしました。
 「今日は先に取材をしてから会社に行くことになっているから大丈夫だよ」
 『育児が危ない』という連載記事を担当している堀井さんは、懇意(こんい)にしている早留歯科医院(はやるしかいいん)に行って、今回のタイトル『(6)ムシ歯が多いと子供が危ない』について情報をもらうことになっているのです。
 「早留先生、いつもお世話になります。今日は、よろしくお願いします」
 「堀井さん、時間通りだね。今日は保健所で乳幼児健診があるから、午前中は休診だったんだよ。あと三十分位しかお付き合いできないけど、頼まれていた資料は用意しておいたからね」
 「それで朝が都合よかったんですね。でも、それだけあれば十分ですよ。では、先日お話していた児童虐待とムシ歯の関係について、教えてください」
 堀井さんは早留先生から手渡された資料に、目を通しました。そこには、県が歯科医師会の協力のもとに、児童虐待と口腔内の状況の関連性について実態調査を行なった結果が記されていました。
 「まず、児童虐待の相談件数や医療機関からの児童虐待通報が、この10年間で10倍以上に増えているんですね。どうしてこんなに増加したんでしょう?」
 「最近は社会不安がどんどん増えてきているからね。しかし親自身のストレスのはけ口として、子供が被害に会うというのは、やりきれないことだよ」
 早留先生の危惧するように、虐待は個人の身体的障害や経済的問題だけでなく、核家族化・地域の連帯感の欠如などの社会問題など、さまざまな理由から発生しています。そして、その数は年々急速に増えていて、弱者である女性や子供に重大な被害を及ぼしているのです。
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 ◇はぴか情報
節分の 豆にも負けぬ 祖父の歯よ(中1、重松史宏さん)
還暦や 唐黍齧(とうきびかじ)る 歯が自慢(一般、大野美代子さん)
愛媛県歯科医師会(089・933・4371)「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学生以下、中高生、一般)第1回入賞作(学年は昨年)をご紹介します。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページにあります。