◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
◇乳歯編 第12章 新米パパの夢/4 フッ素は諸刃の剣
◇用法守って、大きな効果
◆これまでのあらすじ

 羽賀さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して初孫の美代(みよ)ちゃんを生んだばかりの長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男昭夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。加奈さんの夫、板井洋(いたいひろし)さんは、美代ちゃんの歯の手入れについて、友人や家族と熱心に語り合っています。
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 「毒って、どういうことなんだい」。フッ素が毒にもなるという言葉に驚いた洋さんは、堀井さんに尋ねました。
 「つまり、薬といっしょで用法・用量を守れば効き目があるけど、間違った使い方をすれば副作用が生じるということだよ」
 フッ素は一度に過剰摂取すると急性中毒を引き起こし、また誤った量を長期に飲み続けると、歯牙フッ素症(斑状歯(はんじょうし))や骨硬化症になることがあります。歯牙フッ素症とはエナメル質形成不全症とも言われていて、エナメル質に境界不明瞭な白斑や小さな凸凹ができてしまうのです。
 「フッ素も間違った使い方にならないよう、歯医者さんで管理してもらわないといけないんだね。薬もだらだらと使い続けると、人間の本来持っている自然治癒力を弱くするおそれがあるから、飲み方にも注意が必要だといわれているしね」
 洋さんが感慨深げな表情でそうつぶやくと、堀井さんが腕時計をチラッと見て言いました。
 「おっと、こんな時間だ。それじゃあ、また!」。午後一番で取材の打ち合わせのある堀井さんは、足早にお店を後にしました。
 「あわてない。あわてない」
 そうつぶやいた洋さんは、まだ10分程休み時間が残っているのを確認しながら、お茶をゆっくり飲みました。それに洋さんの茶碗には、まだ少しご飯が残っていました。もし以前の洋さんなら、とっくに昼飯をたいらげて、爪楊枝を使っていた頃だったでしょう。しかし羽賀さんの家で卑弥呼と咀嚼(そしゃく)の話を聞いてからは、一口30回咬むことを心掛けていたのです。
 「ただいま」。特集記事の原稿をなんとか仕上げることができた洋さんは、住んでいるアパートに帰宅しました。
 「お帰りなさーい。美代ちゃん、お父さん帰ってきたわよ」
 台所の子供イスにおとなしく座っていた美代ちゃんは、洋さんの顔を見ると、身を乗り出してうれしそうな顔をしました。それは、洋さんが帰ってくるといつも、美代ちゃんを抱き上げて、お帰りのチューをしてくれるからです。数年後には嫌がり、十数年後には話さえしてくれなくなるかもしれませんが、今は二人とも、うれしくて仕方がないのでしょう。
 食事が終わって洋さんは、堀井さんと会話したことを加奈さんに話しました。そして加奈さんもフッ素のことには興味があったので、これからどのようにして美代ちゃんの乳歯をムシ歯から守っていくか、相談することになったのです。
 「まず第一歩はハミガキに慣れさせて、いやがらないようにすることかなー」
 「その点は大丈夫。この前から乳児用ハブラシを使って、ハブラシに少しずつ慣れさせているわ。それに上の前歯も顔を出してきたから、寝かせ磨きも始めているの」
 寝かせ磨きとは、子どもをひざに寝かせ、上から口の中をのぞき込むような姿勢をとり、あごを手で支えながら磨く方法です。このとき、前歯の真ん中の歯肉にある筋(上唇小帯(じょうしんしょうたい))に、ハブラシが当たらないよう注意しましょう。そこにハブラシが当たると、痛みのためハミガキを嫌がるので、その部分を指でガードしながら軽くハミガキするのがコツなのです。
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 ◇はぴか情報
鰯(いわし)雲 抜けし歯なげる 屋根の上(中2柳本昌伸君)
肩身せまく 歯並みの話の 中に居る (一般、白形重男さん)
愛媛県歯科医師会(089・933・4371)「はぴかちゃん歯いく大賞」(小学以下、中高生、一般)第1回入賞作(学年は昨年)をご紹介します。9月末まで第2回募集中。要項は左欄の同会ホームページにあります。