◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
◇歯の芽生え編 第11章 初めての赤ちゃん/4 歯にもそれぞれ顔がある
◇ムシ歯菌の隠れ家どこに
◆これまでのあらすじ
 羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して赤ちゃんができた長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男昭夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。羽賀さん宅ではこの日、加奈さんの長女美代ちゃんの初めてのハミガキについて話し合っています。
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 上の前歯4本が生えそろう1歳位までは、ムシ歯になる子どもはわずかです。特に下(の前歯がムシ歯になることはあまりなく、乳歯が生えてきてもハミガキに神経質になる必要はありません。
 「でもそろそろハブラシにも慣れさせないといけないかな。いざハミガキしようとした時、嫌がっても困るしね」
 赤ちゃんは異物を入れられるのを嫌がりますが、のどの奥まで入らないような柄付の乳児用ハブラシを遊びの中に取り入れ、ハブラシに少しずつ慣れさせてください。
 またお母さんも毎日、赤ちゃんの口の中を見る習慣を付けてください。そして1歳を過ぎたら、朝と晩の2回くらいは小さなやわらかい歯ブラシを使って、やさしく歯面の汚れを取ってあげましょう。
 「お姉ちゃん、下の前歯はムシ歯になりにくいって言ってたけど、僕も磨かなくていいのかな?」
 明夫君が真顔で加奈さんに質問しました。
 「明夫の歯は大人の歯だから、しっかり磨かないといけないの。これから一生使わないといけないし、大人の歯は子供の歯と違っていろいろ複雑だから磨きにくくなるの」
 「えっ、大きさが違うだけじゃないの」
 「違うわよ。人間だって成長する時、いろいろな部分の大きさや形が変わっていくでしょ。もし美代がこのまま大きくなったら頭でっかちになってしまうじゃない」
 明夫君の横では大人になった四頭身美人?の美代ちゃんを想像した唯ちゃんが、ゲラゲラ笑っていました。
 そして加奈さんは明夫君に永久歯が乳歯に比べて、凸凹が多くなっているのを説明しました。
 「でも子供の歯も奥歯は複雑な形をしているから、大人の歯と同じようにしっかり磨かないといけないのよ」
 その時加奈さんは母親教室で習ったムシ歯の出来やすい場所を思い出しました。
 「えーと、ムシ歯にならないよう気をつけて磨かないといけないのは、歯と歯の間、歯茎との境目、それと奥歯の溝の部分だったわね」
 「どうしてそんな場所があるの? それに奥歯の溝って何?」
 「あなただって、勉強に苦手科目があるじゃない。ムシ歯だって住み着くのに好きな場所があるのよ。それに歯は一本ずつ形が違っていて、それぞれに役割があるの」
 明夫君の質問に加奈さんは、奥歯は食物をすりつぶす為にすり鉢のように溝がたくさんあること、根は咬合力に耐えられるよう何本かに分かれていること、そして前歯は口唇や舌の動きをじゃませず発音をしやすいようにわんきょくしていることなど、それぞれの歯には顔があり、役割によって形が違っていることを説明してあげました。
 「おねえちゃん、よく勉強しているね」
 明夫君は加奈さんの歯の講義に感心しきりです。
 「これが学生の頃だったら、良かったんだけどね。でも歯の中は、どうなっているのかしら」
 少し不満そうに小声でささやいた浮江さんは、以前、顎関節症について調べた『家庭医学大辞典』を持ち出してきました。
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 ◇はぴか情報
 歯磨きは上の前歯が生え始めたころから、遊ぶつもりで少しずつ歯ブラシに慣らします。子供を仰向けにして頭をひざに乗せ、時間は短く、前歯なら10数える程度。虫歯になりやすい奥歯のかみ合わせ面から始めるなど常に同じ順序で。(資料提供、8020推進財団)