羽賀さん一家の元気ではぴか:43 
第10章 その先に見えるもの 2 

 ◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
 ◇先進医療編 第10章 その先に見えるもの2  第三の歯
 ◇進むインプラント治療まだ課題も
 ◆これまでのあらすじ
 羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。内蔵さんと保志子さんはある日、歯科医の日真名先生(ひまなせんせい)に、乳歯や永久歯に続く「第三の歯」の話を聞きました。
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 「クローンと言う言葉を知っていますか?」
 「新聞で、クローン牛とかクローン羊が話題になっていたので、その時知りました」
 新聞の隅から隅まで読むのが日課の内蔵さんが、日真名先生からの質問に答えました。
 「クローンとは、植物や動物で遺伝的に同じものを作り出す技術のことです。この技術を使えば、人間の体の一部分が不具合になった時、機械のように故障した部分を交換して修理がきく、そんな時代がやってくるかもしれませんね。でも、一人の人間そのものに応用した場合、倫理・宗教上問題になるかもしれませんね」
 「振り向けば、そこにもう一人の自分がいたら、ひっくり返ってしまいますからね」
 保志子さんが笑って答えました。そんな話をしていると、誰かが声をかけてきました。
 「こんにちは、羽賀さん。あなた、お家に入っていただいたら」
 その声の主は、日真名先生の奥さんの琴香(ことか)さんでした。
 「もうひと段落ついたところですから、よかったらお茶でもどうですか?」
 「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
 内蔵さんは、日真名先生の誘いにうれしそうに答えました。そして、リビングに通された二人は、琴香さんが出してくれた和菓子とお茶をいただきながら、日真名先生と再生医療という乳歯・永久歯に代わる『第三の歯』の話を続けたのです。
 「でも、こんな先の話は、私達にとっては夢物語じゃないでしょうか」
 しばらくして、先ほどまで未来の歯科治療の話に目を輝かせていた内蔵さんが、少し寂しそうに言いました。事実、歯牙本来の形態と機能を回復するのは困難であり、この技術が一般的になるのは、まだ先のことでしょうから。
 「でも、応用できる技術は少しずつ進歩しています。例えば、インプラントという治療方法をご存知ですか?」
 「先日テレビで放送しているのを見ました。骨に金属を埋め込んで、その上に人工の歯をかぶせる治療ですね」
 「よくご存知ですね。このインプラントは、すでに30年以上前から臨床に応用されていて、現在ではその成功率も非常に高くなってきているのです。それに、埋め込む材料も、チタンという人体にアレルギーの少ない金属が主流になってきています。
 また、人工骨を利用したり体の他の部位から骨移植をすることにより、以前は金属を埋め込むのに十分な骨量がなくて、手術できなかった症例にも、適応範囲が広がってきています。さらに、再生医療の技術の一部が応用されて、失われた骨の再生治療も行われているのですよ」
 人工臓器としてのインプラント治療は、近年広く普及してきています。しかし、その種類や術式はたくさんあり、それぞれの先生が独自の判断で選んでいるのも事実です。そのため、骨との親和性や異物反応など多くの問題を、これからもクリアしなければならないでしょう。
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 ◇はぴか情報
 インプラントは、歯を失った部分の骨に、チタンなどでできた人工的な根を埋め込んで歯を作る方法です。入れ歯などではうまく対応できないケースなどに応用されますが、埋め込みに際して、全身的・局所的な問題で種々の条件があります。十分な診査と説明を受けましょう。(資料提供、愛媛県歯科医師会)