羽賀さん一家の元気ではぴか:/38
 第8章 保志子さんの決断/5
 ◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
 ◇義歯編 第8章 保志子さんの決断/5 入れ歯もメンテナンス
 ◇調整と訓練で入れ歯はピッタリに
 ◆これまでのあらすじ
 羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。入れ歯を作ったものの、大きいと感じていた保志子さん。再び歯科医院を訪れ、日真名先生(ひまなせんせい)にその状況を話しました。
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 入れ歯の大きさを気にしていた保志子さんに日真名先生は、その理由を説明しました。
 「入れ歯は歯の代わりに歯茎という粘膜で、噛む力を支えています。ですから、広い面積の方がより大きな力に耐えられるのです。例えば、柔らかな雪の上を歩く場合、普通の靴では深くまでもぐってしまって歩けなくなりますが、『かんじき』を履くと歩くことができます。これは広い範囲で接触することで、足が雪にもぐり込むのを防いでいるのです。入れ歯も同様に広い面積で力を受け止めることで、沈み込むのを防いでいるのです」
 「それで大きくなったのですか。それに少し削っただけで、大きさがあまり気にならなくなりました」
 「でも、以前の入れ歯も最初はこんなに小さくはなかったと思います。痛い所を削るのを繰り返しているうちにだんだんとこうなったのでしょう。どんな物にも顔があるように、入れ歯にも理想的な顔があるのです。私たちはそこに近づけるように試行錯誤しながら診療を行っているのです。でも、一目見て最適な大きさはわかりませんし、実際に入れ歯を入れて初めて見えてくる所もあるんですよ」
 「奥が深いということですね。確かに入れ歯を作るのが上手な先生は、名医といわれますからね」
 「私の場合は診療中よく迷っていますから、『迷医』のようです。それに私たち歯科医は、入れ歯のことを義歯(ぎし)と呼んでいます。それは義手(ぎしゅ)や義足(ぎそく)と同じで、出来上がってからの調整と患者さんによる訓練が必要不可欠なものだからです」
 その後、保志子さんは新しい入れ歯の調整に3回通院しました。
 「保志子さん、絶好調じゃない」
 ゲートボールが終わってほめてくれた仲良しのシゲさんに、保志子さんは今までのいきさつを話しました。
 「ふーん、入れ歯も道具だからお手入れしないといけないのね。私もこのスティックに替えてから調子が良いから、やっぱり道具は大事なのね」
 「でも、義歯はひとりひとりの口に合わせたオーダーメードの道具だから、自分でいじったりせず、歯医者さんで診てもらわなければならないのよ」
 「そういえば、源さんは痛い所を自分で削ったから、入れ歯がだめになって作り直しに歯医者さんに通っているらしいわよ」
 シゲさんは笑いながら、そう言いました。
 「それから毎日少しずつ変わっていく軟らかい歯茎の上に乗っているから、時々調整をしないと長持ちしないって先生が言ってたわ」
 「その日その日で調子が違うのはお顔と一緒ね。今日の顔は、はれぼったいとか、今日は化粧のノリが悪いとか、ところでどうしたら調子良く長持ちするのかしら?」
 保志子さんは先生から聞いたことを話しました。入れ歯の調子が良いと思っていても、半年に一度くらいは定期健診<メンテナンス>が必要だということです。それは、気がつかないうちに義歯と歯茎の間にすき間ができていたり、歯がムシ歯や歯周病になっていることがあるからです。ひどくならないよう早めに治療するのが、入れ歯を長持ちさせるコツなのです。近くで話を聞いていたトメさんは、悔しそうな顔をしながら遠ざかっていきました。
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 ◇はぴか情報
 義歯の効果として、身体の平衡感覚の向上が挙げられます。義歯により歩行周期が安定・短縮することで、歩幅・歩行速度が増して転倒予防になります。適切な義歯を入れて・み合わせや歯並びが回復することで、高齢者は日常生活動作の能力を高め、生活の質を確保できるようになります。(資料提供8020推進財団)