[羽賀さん一家の元気ではぴか]/29
 第7章 内臓の願い/1
 ◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
 ◇第7章 内臓の願い(1)歯医者が家にやってきた
 ◇住宅診療を積極利用を
 ◆これまでのあらすじ
 羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。浮江さんと保志子さんが市役所の広報誌で、ある記事を探しているようです。いったいどんな内容の記事を探しているのでしょうか?
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 「おばあちゃん、ここに出ているわよ」
 浮江さんは市役所発行の広報誌を、保志子さんに手渡しました。
 「浮江さん、小さい字がよく見えないから、読んでちょうだいな」
 二人が探していたのは、歯科の訪問診療の案内記事だったのですが、それには理由があります。大二郎さんのお父さん、つまり保志子さんのご主人の内蔵さんは2年前に突然、風呂場で倒れて、病院に運ばれました。運良く大事には至らなかったのですが、その時、軽いまひが右半身に残ってしまったのです。
 医者からはリハビリに専念すれば良くなると言われているのですが、本人に気力がなくなっているのか、それからの内蔵さんは自室にこもることが多くなりました。そして、保志子さんと決まった時間に車椅子で散歩に出かける以外は外出もなく、最近では歯が痛いという理由であまり食事もしなくなったのです。
 これではますます体力が衰えてしまうのではないか、と保志子さんが途方に暮れて、浮江さんに相談をもちかけたのです。浮江さんも先日、加奈さんから内蔵さんの歯のことを聞かれましたが、保志子さんに任せっきりで答えられず心配になっていたところでした。
 浮江さんの調べでは、住んでいる街では一昨年から、寝たきりの高齢者や障害者など通院して歯科治療を受けるのが困難な人に対し、自宅や福祉施設へ出向いて健診や治療を行うサービスを積極的にしているそうです。
 「まず診てもらいたい人がいれば、保健所のこの番号に電話して申し込むみたいよ」
 「本当に家まで診に来てくれるのかい。それにどうやって治療するのかしら」
 『案ずるより産むが易し』と早速に電話をした浮江さんでしたが、担当者に内蔵さんの体や口の状態を簡単に説明するだけで、往診をお願いできました。その後、保健所から連絡があり、二日後に往診に来てくれることになったのでした。
 「ごめんください、往診にやってきました」
 玄関から声がするので浮江さんが出て行くと、大きなバッグを抱えた日真名先生(ひまな)が立っていました。実は先日の保健所の連絡で、来てくれるのが顔見知りの日真名先生だと分かり、一安心していたのです。
 「日真名先生、この前は娘がお世話になりました。保健所の人にかかりつけの歯医者さんがいないか聞かれ、先生のお名前を出したのですが、先生が往診もされていて助かりました。今日はよろしくお願いします」
 内蔵さんの部屋に通された日真名先生は、口の中を一通り見て、その状態を記録表に書き込みました。次にバッグから器械を取り出し、義歯を削る準備を始めました。
 「今日は義歯の不具合とお聞きしていましたので、傷ができている部分の応急処置をしておきましょう」
 日真名先生は削りかすが飛び散らないよう、用意していた透明のビニール袋の中に義歯を入れ、持参した歯科用エンジンで具合の悪い所の調整を行いました。=愛媛県歯科医師会監修、毎週木曜掲載
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 ◇はぴか情報
 寝たきりの人の歯の健康や治療には、多くの専門家が連絡を取りながら行っています。介護保険制度で要支援・要介護認定を受けると、歯科医師や歯科衛生士から介護に必要な口のケアの訪問指導を受けることができます。自宅での訪問診療も実施しています。詳しくは、かかりつけの歯科医や各県歯科医師会にお尋ねを。 (資料提供 8020推進財団)
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