[羽賀さん一家の元気ではぴか]/23
 予防編 第5章 帰ってきた…
 ◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
 ◇第5章 帰ってきた長女(4)蛇ににらまれたカエル
 ◇ムシ歯予防、だ液に効果あり
 ◆これまでのあらすじ
 羽賀(はが)さん一家は、四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。ムシ歯予防の話に引き込まれた加奈さん。その表情は真剣です。
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 参加することに最初はあまり気乗りのしなかった加奈さんでしたが、先生の話を聞くうちに目が獲物を狙うライオンのように爛々と輝いてきました。
 「上の図と下の図は、どういった違いがあるのですか!」
 「上は1日3回規則正しい食生活をしている場合で、下はその間に何回も間食をしている人の口の中です」
 「この波がたくさんある人ほどムシ歯になりやすくなると理解していいのでしょうか!」
 「はい、そうですね。下の図は上に比べて波が不規則でなかなか上がっていかないのがわかると思います。その結果、口の中は酸性の時間が長くなりムシ歯になりやすくなるのです」
 「それでは……!」
 先生はその後、汗をふきながら答え続けましたが、こうなってはどちらが先生だかわかりません。質問の嵐がやんだころ、少し声のかれかけた先生は蛇ににらまれたカエルのような気分になったのでしょうか、もう加奈さんとは目を合わせようとしませんでした。
 「それから、もう一つ注目してもらいたいことがあります。ここにはたくさんの波がありますが、一つの波だけを見てください。何か気づくことがありませんか?」
 口の中がカラカラになった加奈さんの代わりに隣の妊婦さんが答えました。
 「下がる時はストンと落ちていますが、上がる時はジワジワって感じですね。これって学校の成績みたいですよね」
 「成績を上げるのは楽じゃないが、さぼると簡単に下がってしまうということですね。おもしろい例えですが、その通りです。一度下げられたpHはだ液によって上がってきますが、そのカーブは下がる時に比べて緩やかにしか上昇しません。また、その速度も人によって違っているのです」
 「そうか、それで、ムシ歯になりやすい人となりにくい人がいるのですね」
 「いいことに気がつきましたね。その人の歯の質によってもムシ歯のなりやすさに差があるのも事実ですが、これを改善するのは難しいでしょう。ですから、歯磨きや食生活の改善によってムシ歯の発生を防ぐことが重要なのです」
 先生の言葉にそこにいた誰もが相づちを打たずにはいられませんでした。そして、不規則な波を作れば作るほどムシ歯になってしまうことを理解することができたようです。
 「ただいま」
 出産を間近に控えて実家に戻ってきた加奈さんの声は、明るさを取り戻していました。そうです。あの後加奈さんは、母親教室だけでなく歯の治療にも大きなおなかで通院したので、これから立派な母親になる自信もついたのです。また、それまでは「だ液」のことを「唾」と呼び、なんとなく汚いイメージを持っていた加奈さんでしたが、その大切さを理解したのでしょうか。その後、「唾」でなく「だ液」という言葉を使うようになったということです。=愛媛県歯科医師会監修、毎週木曜掲載
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 ◇はぴか情報
 だ液は消化液の一つで、口の中の汚れを洗い流して歯の表面をきれいにし、口の中を常に中性に保とうとする作用があります。噛めば噛むほど分泌量が増加しますが、繊維質のものや弾力があるものを食べると噛む回数が増えます。よく噛んで、たくさんだ液を出すことでムシ歯や歯周病予防につながります。(資料提供8020推進財団)
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