[羽賀さん一家の元気ではぴか]/11
 歯みがき編 第3章 唯ちゃんは… /愛媛
 ◇文・飯尾秀人、絵・KOUJI
 ◇第3章 唯ちゃんは今どきの高校生(2)脱灰と再石灰化の綱引き
 ◇白斑はムシ歯の始まり
 ◆これまでのあらすじ
 羽賀(はが)さん一家は、 四国のある街で仲良く暮らす大家族。お父さんの大二郎(だいじろう)さん、お母さんの浮江(うきえ)さん、結婚して妊娠中の長女加奈(かな)さん、高校生の二女唯(ゆい)さん、小学生の長男明夫(あきお)くん、大二郎さんの両親の内蔵(ないぞう)さんと保志子(ほしこ)さんは、みんな歯に問題を抱えていました。唯ちゃんは、ボーイフレンドの太朗君(たろう)に、歯肉炎ではないかと指摘され内心穏やかではありません。
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 家に帰ってから唯ちゃんは、自分の部屋で鏡を見ながら口の中をのぞきこんでいました。
 「やっぱり少し歯肉が腫れているかな。それに明夫が『おねえちゃんの口くさいよ』なんて最近言うことがあるし……」
 そうつぶやきながら太朗くんが今日教えてくれたことを思い出していました。まず歯肉炎は正しい歯みがき指導を受けることで治すことができるということ、それに歯みがきの仕方は人それぞれ違っていて、歯科医院で個別に指導を受けトレーニングを積まないと上達しないということです。
 「トランペットといっしょね。最初はうまく吹けなかったもん。何でも練習することが必要なわけね。明日にでも行ってみようかな」
 学校の部活動で練習しているトランペットのケースを眺めながら、そう心に決めた唯ちゃんでした。
 次の日、診察用の椅子に座ってしばらくすると、先生がやってきて唯ちゃんの口の中を一巡り診てから話しかけてきました。
 「夜寝る前に歯みがきはしているの?」
 「はっ、はい。でも忘れて寝てしまうこともあります」
 最近寝る前の歯みがきをすっかりさぼっていた唯ちゃんは、真っ赤な顔をして、そう答えました。
 「それはいけないね。夜寝ている時が一番ムシ歯や歯周病は進行しやすいんだよ。唯ちゃんの場合歯肉炎といって歯周病の最初の段階になっているようだからしっかり歯みがきしないといけないね。それに……」
 そう言うと先生は、小さな歯科用のミラーを唯ちゃんの上の奥歯の所にもっていきました。
 「この歯の外側を見てごらん、白く濁っているだろう。これは白斑といってムシ歯になりかけているんだよ」
 「ムシ歯! じゃあ、治さないといけないんですか?」
 「まだこの段階ならしっかりした歯みがきができれば治さなくていいんだよ。ちょっと難しい話になるんだけど、歯の表面では歯が少しずつ溶けていく脱灰という現象と、それを防いで、硬さを保とうとする再石灰化という現象が、たえず行われているんだよ。このバランスが脱灰(だっかい)の方に傾けばムシ歯になってしまい、再石灰化の方に傾けば歯は健全な状態を保つことができるんだよ。簡単にいえば脱灰と再石灰化の綱引きみたいなもの。脱灰チームが勝てばムシ歯、再石灰化チームが勝てば健全な歯ということだね」
 「じゃあ、私の歯にある白斑は脱灰が勝っているということなんですか?」
 唯ちゃんは少し落胆した顔をしながら聞き返しました。
 「そうだね。少し脱灰チームの方に綱引きは優勢のようだね。しかし、正しい歯みがき指導を受けて、食生活を改善すれば再石灰化チームも充分挽回できるよ。今から衛生士さんにアドバイスしてもらったらいいよ」
 「はい、わかりました」
 そう答えて唯ちゃんは、担当の衛生士さんに歯みがき指導や食事指導を受けることになりました。
=愛媛県歯科医師会監修、毎週木曜掲載
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 ◇はぴか情報
 ムシ歯菌は糖質を栄養にして、ねばねばした物質を作り、食べかすとともに歯垢となります。その中でムシ歯菌が増えて酸を作り、硬い歯の表面(エナメル質)を溶かしてムシ歯になるのです。ムシ歯を放っておくと、歯の根の先にウミがたまって歯を維持することが難しくなります。ムシ歯は年齢とともに増え、大人の歯の約半分がムシ歯にかかっています。(資料提供 8020推進財団)
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